今回はネットサーフィンをしていて、興味を持った資料があったのでそれについて書いていきたいと思います。
何に興味を持ったかというと、それは音律です。つまり、どのようにして現代の「ドレミファソラシド」が生まれたかという問題です。音楽を作るうえでは、特に知らなくてもいいことだとは思うのですが、気になると気が済むまで調べたくなってしまう性格のため書き留めたいと思います。
ネットサーフィンをしていると音律について、こちらの興味深い資料に行き当たりました。
調べてみても丁寧に書いてあるサイトは中々ないのですが、こちらの資料はある程度分かりやすいと思いました。
今回はこちらの ”★「ドレミファ~はどっから来たんだ」‐その前夜” までを追ってみたいと思います。
★ ドレミファソラシはどっから来たんだ-その前夜
下記の楽譜はドレミファ~の出自としても誉れ高き、何処までも延々と続く自然倍音列を示しています。

自然倍音列16音から各音程のcent値ができるだけ均等になるように抽出してオクターブ内に凝縮し、五線譜上に並べてみたものです。
オクターブ上がるごとに間に入る音程が増えるので、1~2オクターブで1、2~3オクターブで3、3~4オクターブで7個の音が並びます。
第8倍音から第16倍音までを切り取ったものをそのまま、より均等な音程の並びとして考えることができます。
セント(cent)からN ≈ 3986.71×log[10](b/a) の式を使ってセント値を実際に求めてみます。
9/8
3986.71log[10]9/8 = 3986.71log[10]9 – 3986.71log[10]8 = 3804.12 – 3600.4 = 203.72
10/8 = 5/4
3986.71log[10]5/4 = 3986.71log[10]1.25 = 3986.71×0.0969 = 386.31
11/8
3986.71log[10]11/8 = 3986.71log[10]1.1 – 3986.71log[10]8 + 3986.71log[10]10
= 165.05 – 3600.4 + 3986.71 = 551.36
12/8 = 3/2
3986.71log[10]3/2 = 3986.71log[10]1.5 = 3986.71×0.1761 = 702.05
13/8
3986.71log[10]13/8 = 3986.71log[10]1.3 – 3986.71log[10]8 + 3986.71log[10]10
= 454.09 – 3600.4 + 3986.71 = 840.4
14/8 = 7/4
3986.71log[10]7/4 = 3986.71log[10]7 – 3986.71log[10]4 = 3369.17 – 2400.4 = 968.77
15/8
3986.71log[10]15/8 = 3986.71log[10]1.5 – 3986.71log[10]8 + 3986.71log[10]10
= 702.05 – 3600.4 + 3986.71 = 1088.36
16/8 = 2
3986.71log[10]2 = 1199.999 ≈1200
※logについてはこちら→(準備中)
上記の計算を踏まえて、第1~16倍音までをオクターブ内に収めると音階らしきものが見えてきます。

この音階らしきものは、如何にも合理的なよーにも思えます。しかし、これがそのままドレミファ~の出自では断じてありません。
なぜなら、このままぢゃ何処をとってもオクターブ以外”シンメトリーの欠片もない=どこをとっても転回不可能=同じ幅の音程が一つもない=インターバルを保ったメロディの動きが不可能” ⇨ 人の耳には気持ち悪く聞こえてしまう
※ (オクターブ以外)シンメトリーの欠片もない
ユニゾンと2オクターブ上のC₂の音程は1オクターブ上のC₁を挟んで1200:1200でシンメトリーな関係になります。しかし、ユニゾンとオクターブの音程は中心音(3/2)を挟んで702:498とかなり差があるし、ユニゾンと第三音も第二音を挟んで203.9:182.4と異なります。つまり、オクターブで区切る以外にシンメトリーな音程関係を見つけることはできません。
※ どこをとっても転回不可能
音楽における転回には”音程の転回”、”和音の転回”、”旋律の転回”と3つあるが、
この場合、”音程の転回”と考えます。度数という考え方を用いてみると、第二音から見た第五音の度数は4度です。第五音から見た第九音の度数は5度です。しかし、どちらのセント値も498です。つまり、自然倍音の音階には度数の概念が通用しません。なので、第一音を転回してオクターブ下に配置しても度数を用いて表すことができません。
※ 同じ幅の音程が一つもない
上記の譜表を見ての通り、同じ幅の音程は一つもなく、オクターブに近づくごとに2音間の音程は小さくなっていきます。
※ インターバルを保ったメロディの動きが不可能
オクターブに近づくほど2音間の音程は小さくなっていくのに、オクターブ超えたら急にまた音程が大きくなります。均斉が無く、規則性の薄い音程の羅列は脳を混乱させてしまいます。
均斉…全体的に釣り合いが取れて整っていること
もちろんこれではコード進行も成り立たず…実際、旋律にとってこの非合理的なズレは、まったく役立たずのズレでした。
そこで、古代ギリシャ人は、シンメトリーの基準となるインターバルの探求に着手しました。
ここでクイズ!
Q:この世で最もユニゾンに近いの、それはどれ?
sine波であれば、周波数比が最も小さいm2ndやM7thになります。しかし、楽音には自然倍音がたっぷりってことを考えていけば、別な答えがでます。
A:最もユニゾンに近いインターバル、それはP5th。
〇ユニゾンに最も近い音がP5thである理由
楽音を二つ同時に鳴らした場合、倍音同士が全く同じ周波数(共通倍音)だと、倍音同士は完全に溶け合います。
周波数比…楽音を二つ同時に鳴らした時、その二つの音の基音(第一次倍音)の周波数の比
純正律…西洋音楽では周波数の比が単純であればあるほど、より「協和」した音程であると認識されてきました。
以下、純正律による2音の周波数比と音程 更にCを主音とした時の音階上の対応する音です。
1:1 完全1度 C(主音)
1:2 完全8度 C
2:3 完全5度 G
3:4 完全4度 F
4:5 長3度 E
5:6 短3度
8:9、9:10 長2度 D
15:16、16:17、18:19、19:20 短2度
上の表から先ずC(主音)とGだけを摘み取って考えてみます。
G = 3/2C
2G = 3C
2nG = 3nC
これから、分かることはC(主音)の第3n次倍音とGの第2n次倍音は共通倍音という事になります。
一般化すれば [周波数比] = [下声の倍音次数] ÷ [上声の倍音次数]
b/a = nb(下声の倍音次数) ÷ na(上声の倍音次数)
上の事を鑑みた時、周波数比が単純であればあるほど、共通倍音が出現するサイクルは早くなることが分かります。
自然倍音列の中で最初に登場するオクターブ以外の音 = 3/2 = P5th
最初に登場するってことは、
共通倍音同士の倍音次数が近い=低次に共通倍音を持つ=メチャクチャ溶け合う
※溶け合った共通倍音の音量は、その位相と関係する。例えば、2つの倍音が同じ振り幅なら位相0度=360度で振り幅が倍になるし、180度なら消えてしまう。
倍音の法則性
倍音と音階は本質的には同じ物であると考えることができます。
主音を鳴らしてから次の音を鳴らすまでの時間tを極限まで0に近づければ同じであると考えることが出来るからです。
結局、人の耳に気持ちよく聞こえなければ音楽として意味をなしません。
大原則として
重要なのは「周波数比」であって「周波数」ではない
音名xとyが周波数比a/bならばa/b * x = yでxの第a倍音とyの第b倍音は共通倍音
(a/bは過分数)
共通倍音どうしの倍音次数が最も近い周波数比は3/2
更に低次に共通倍音があれば、振り幅比(音の大きさ)も大きいから余計に溶け合うということ。
最も溶け合う2音の関係である周波数比3/2を等間隔に並べていけば和声的にも旋律的にも完璧な音律が完成するはずです。
しかし、ここで問題が発生しました。
どこまで3/2を並べても何オクターブ上にはならないのです。
(3/2)^x = (2/1)^y を満足させるxとyが存在しない数学的証明
(3:2)^x = (2)^y
3^x = 2^(x+y)
x * log3 = (x+y) * log2
x * (log3 – log2) = y * log2
x : y = log2 : (log3 - log2)
故に整数x、yは存在しない
それ故、このP5thの堆積をどこかで止めなければいけなくなりました。
↓
ダイアトニックスケールは何故7音なのかに繋がります。(ダイアと言っている時点で7なのだが)
ピタゴラスは”数の哲学”により7個目で止めました。彼曰く「7は完全なる調和を表す」。
ユニゾンから始まりオクターブで終わらなければならない理由は何なのか?
ユニゾンやオクターブ以外のインターバルを一つ設定するとオクターブを挟んでシンメトリーな転回形がもう一つ登場します。
しかし、一つの音律がオクターブで終わっていないとだんだんとズレが生じてくる。
次回は古代ギリシャ人たちがどこで妥協したのかを追っていきます。








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